「……俺も同罪だ」

 ぼそりともらすと、去ろうとしていた男がこちらを見た。

「未咲の方が助かってよかったと思ってしまったんだ。

 あいつとも友達だったのに。

 未咲が助かってよかった。

 未咲と出会えてよかったと思ってしまったんだ。

 だから、俺もお前と同罪だ」
と言うと、男はふっと笑ってみせた。

 意外なほどの優しい顔で。

 こいつ、未咲の許を去ってくれてよかった……とつい思ってしまった。

 さっきまで無表情だったのに。

 このギャップに、女は、くらっと来るんだな、と思ってしまう。

「まあ、もう二度と会うこともないだろうよ」

 じゃあな、と男は出て行く。

 その後ろ姿を見ながら、それはともかく、こんなに派手な殺し屋でいいのだろうか、と思っていた。

 それにしても、

 殺してないーー か。

 気になるな、と思いながら、未咲のボストンバッグに目をやった。