「樹…」


まだ眠っている、樹。


目を覚ましたら、ショックを受けるだろ

う。


「…琉聖か?」

「…樹」


「琉聖、生きてたか」


「樹…オマエ、脚が」

「あー、どうってことねって」


「…すまない」


「俺が、滑っただけだよ」


樹は、決して弱音を吐かず、明るく振る

舞っていたが、色んな葛藤と闘っていた

に違いない。俺は毎日、樹のリハビリに

付き添った。樹は、驚異的な回復力で、

約一ヶ月ほどで復帰した。


俺が側に居れば、またアイツを危険にさ

らしてしまうだろう。


俺は覚悟を決めて、行きつけのバイク屋

に向かった。


「おっさん、このバイク売りてえんだ」


「…はあ?!テメエ、なに血迷ってんだ

?!」


「…決めたんだよ」

「テメエの相棒だろうが?見捨てんのか

よ?」


「もう、バイクは乗らねえ」

「何があった?」


「けじめつけんだよ」


死ぬほど辛かった。


「オマエのことは、一生忘れねえ。今ま

でサンキュー」


俺は、バイクの鼻先にキスをして、店を

去った。


★end☆