あれ? 声がさっきよりも近くない? 
 
 そう思って、両手を顔から離してみた。

 すると、

「……っ!!」

 と驚くくらい近くに、イケメンさんの顔があった。

 それも、屈みこむようにして、あたしの顔をのぞきこんでいる。

 “キャーッ!!”

 と悲鳴をあげたいところをグッとこらえて、後ずさる。

 もちろん、口元に手を当てて。

 だって声を出したら、バレちゃうかもだし、女子が男子寮にいることがバレたら……。

 通報されちゃうかもだし、そんなことになったら、この大事なミッションが終わっちゃう。

 それは避けなきゃ、なんとかしなきゃ。
 
 だから声を出すことをなんとかこらえて、ふたりっきりの部屋の中を後ずさり続けた。

 でも、あれ? これ以上、進めなくない?

 トンッと当たる感触とともに、壁の硬さを背中に感じた。

 オーノー!

 知らない間にあたし、壁際まで追い詰められてるっ。

 これは、絶対絶命、大ピンチっ!

 すぐ目の前には、見たこともないくらい極上のイケメンさん。

 後ろは、壁のこの状況。

 どこにも逃げ場なんてない。

 そんな状況で……。