トクン、トクン、と握られている手から全身に恋する音が響く。
駅まであっという間だった。

緊張もとけて、余裕がでてきたとき。
もう少し、絢斗くんと一緒にいたいなと思った。

「このまま電車に乗って帰るんだよね?」

もうすぐ改札を通るというときにそう絢斗くんに訊ねた。

彼はわたしの方へ顔を向け、じっと見つめてくる。

まだ話していたいという気持ちをどう相手に伝えればいいのかわからなくて、言葉が出てこない。

数秒の間のあと、絢斗くんが口を開いた。

「菜々花の降りる駅で俺も降りる。もうちょっと話したいし」

彼の口許は緩んでいて、わたしの鼓動が高鳴る。
はじめて……名前を呼ばれた。

嬉しくて、わたしは照れながら頷いた。

改札を通ってホームへ降り、やってきた電車に乗り込む。

隣にいる絢斗くんを昨日よりも、一昨日よりも、あの日告白したときよりも、どんどん好きになっているような気がした。