――――日下部 陽。

教室に滑り込んできた初夏の風が、彼の髪を静かに揺らせば甘い香りが宙を舞う。


ところどころ脱色しているのか、朝日に照らされ、はちみつ色に輝く髪は誘うように風を纏った。


スラリと伸びた長い足は机から無防備に投げ出され、180センチはあるだろう身長のせいで、なんとなく窮屈そうに見える。


二重瞼の黒目がちな瞳に、筋の通った鼻筋、薄い唇、頬杖をつき頬に添えられた指は男の子らしい骨っぽさがあるのに細く長くとても繊細で。


瞳を縁取る長い睫毛は、女の私からしたら羨ましいことこの上ない。


芸能人と言っても違和感のないほど整ったその容姿は、老若男女、誰が見ても一度は見惚れてしまうほど極上だった。


けれど、肝心の日下部くんは神様が与えたその容姿を振りかざすこともなく……


つい先程ミドリが言ったように“硬派”と噂される通り、星の数ほどある女の子達からの愛の告白を、今日までことごとく断り続けていた。