まさか…と耳を疑いました。
でも、ここにルナがいて、コーヒーの要求があるのは確かなことで…


「……私が入れるから…」
「えっ⁉︎ 」

キョトン…としたルナの横をすり抜ける。

「コーヒー……私が入れるっ!」

ドアを開けて中に入った。
第2のお城のように手伝ってきた私の居場所……

(魔女なんかに…邪魔されたくない!)

…そんな気持ちでキッチンに向かったーーー



「帰れ!」

仕事部屋から緒方さんが出てきて言いました。


「手を使うな!帰れ!」

二度もです。
恐い顔で、鋭く目を光らせて、口調はいつも以上に厳しくて、少しも優しくなんてなくて……

「でも…」なんて言い訳もできないくらい隙がなくて…
「私が何かしましたか?」と逆に聞きたいくらいの感じすらして……

…これはいつもの優しさで、ヤケドしてる私に、手を使わせない為だと、分かってはいるけど……


「……っ…」


ーーつい、涙が溢れてしまいました。

一瞬、緒方さんの顔がハッとする。
その顔を見て、慌てて下を向いた。

「そうですね……その方がいいですよね……」

病院の先生から、一週間は水仕事をしないように…と言われた。
毎日薬を付け替えにおいで…と言われて、その為の予約も入れて帰った。

…加えて昨夜は、ゆっくり休めるところの邪魔もしてしまってる……


(……これ以上…迷惑かけれない…)

キュッと奥歯を噛んで項垂れた。
緒方さんは声をかけようとする仕草を見せたけど……結局、何も言わず知らん顔して、隣の部屋に戻っていった。