「北村。どうした?どっか具合悪いのか?」


「んー。そこ誰か寝てるの?」


「いゃ、資材置いてるから目隠しに閉めてるだけ。誰もいないよ。」

「ふーん。」


みっちゃんの声のあとに聞こえたのは悠斗の声。


なんでっ!?


なんで悠斗がくんの!?


私はバレないように息を殺して二人の会話を聞いていた。


「……それで?どうした?」


「や、なんかやる気になんなくて、ダルい。」


「あんなに頑張ってたのに。……葉山とは相変わらずか?」


えっ!?私!?


私の名前が出てきたことに動揺して、動悸がハンパない。



「……相変わらずだよ。話してももらえないし、目もあわせてくれない。」


「葉山の為に頑張ってたのになぁ。それで?医学部はどうなの?受かりそう?」


「私大ならたぶん。でも国公立はまだ心配。でもうち、片親だから国公立狙いたいんだけど。学費も半端じゃないし。」



私の為に頑張る!?
悠斗が医学部!?国公立狙い!?
そんなの聞いてないっ!!


「葉山の為…だっけ?」


「そう。それにしてはスタートが遅かった。医大行くって決めたの今年の春だし。」


「……なんで医大?」


「前も話したじゃん。高1の春休み、目の前で麻紀が倒れた。

俺はその時何も出来なくて苦しむ麻紀をただ見てるだけだった。

悔しかった。自分が無力なのが。何も出来ないのが歯がゆかった。

だから俺は医者になる。何があっても助けれるように。麻紀の側にずっといれるように。


にしては、スタートが遅くてかなり焦ってた。模試の結果も良くなってこないし、毎日いらついてた。で、麻紀に冷たくしてこの有り様。」