教室に戻ると心配そうにあきが駆けてきた。

「大丈夫だった!?」

「あ、うん、平気」

 安心させるように、笑顔で答える。
 先に席に座る委員長を横目で追いながら、あきが内緒話をするように葉菜の耳に口を寄せる。

「委員長ったらね! 倒れたあんたのこと、抱きかかえて体育館を後にする姿がヨロヨロしてて様になんなくてさ、最高にカッコ悪かったー!!」

「あはは……」

 自分から出たのは乾いた笑い。
 たぶん、委員長という役の為に、わざとよろけたりして力のない振りをしたんだろう。
 本当のレンはひ弱じゃないから。
 私なんて簡単に持ち上げられるはずだった。

「でも、今までずっとそばにいたなんて……アイツ、葉菜のこと好きなんじゃない!?」

「そ、それはないんじゃないかな……」

 私のこと、好きなんてありえない。
 ただの召使いとしてしか見てないもん。
 キスした後だって「これがキスだバカ」とか言われたし!
 あーむかつく!
 ちゃんとしたキス、私にはあれが初めてだったのに……。

 あいつの鼻っ柱、折ってやりたい! 

 いつか……いつかキャーン、言わしてやるんだからっ!! 

  
 おわり。