ゆ、幽霊……?
 教科書やノートを持つ手が緊張で汗ばんだ。
 き、気のせい気のせい。
 それでも恐る恐る立ち上がる。

 ガラッ
 ガララッ

「!!」

 教室の前扉が音を立てて開き、驚いた沙羅はそちらを見た。

「ちぇっ、このドア渋いっつーの」

 ドアが開いたそこには黒い人影。それがゆらゆら揺れて教室に入ってきた。
 おっおっおっ……おばけー!!!!

「ひゃぁぁぁぁぁっ!」

「う、うあぁぁぁぁっ!」

 沙羅は叫びながら頭を抱えてその場にうずくまる。
 あ、あれ? わたし以外の叫び声も聞こえなかった?
 自分の叫び声に重なるように、男の子の声が聞こえた。

 幽霊じゃない?
 もしかして、本物の人?

「だっ……誰か、いるの……?」

 ひとがいるらしい辺りに恐る恐る声をかける。

「お前こそ、誰だよ? こんな時間に学校にいるなんてよ。イテッ」

 こちらの様子を窺いながらも、移動を開始していたらしいその男の子が机に足を引っ掛けたらしい。
 苛立った男の子の声と共に、鉄と鉄がぶつかるような甲高い音がした。