まさに一瞬の出来事だった。炎に包まれた老人は一瞬のうちに魂を焼かれ、完全に消滅してしまったのだ。
『お爺さんのロウソクが……消えた』
 そして、お爺さんのロウソクの炎は消え、僕の意識も闇へと溶けていった。

 ……。
「結局、お爺さんは心臓麻痺で死んでしまったようだよ。人間ロウソクと同じで、劇的な死に際は激しく燃え上がるのかもね」
 淳さんの話はこの世とあの世を行き来するという、とても不思議な話だった。
「でも、怖いね。人の寿命を横取りするなんてさ。そのお爺さんがもし今も生きてたら今後も様々な人の寿命を奪って生き続けていたかもね」
 紫乃さんは両腕で身体を抱えて震えた。
「それにしても淳さん、3度目はなんで死にかけたんですか?」
 私は最後に疑問に思っていた事を尋ねた。
「ん? ……それは秘密」
 意味深な冷笑を残し、淳さんの話が終わった。
 残り35話