6月。
【お、俺!お前のことが好きなんだ!!
俺のこと少しずつでいいから男として 見て欲しい!】

――キャー!!いい!いいよー感動だよーやっぱりこの漫画、買って正解だよー!
桃菜はニヤけてしまう顔を必死に抑えながら、教室で漫画を読んでいた。
「桃菜さん。ごきげんよう。今日もお元気そうですわね。何を読んでいらっしゃるの?」
生徒会長兼、クラス委員長の紅桜姫美(べにざくらひめみ)が話しかけてきた。
「姫美!おはよー。恋愛小説だよーごめん、お手伝いに行って来るね。」
ニカッと笑いながら、小説と誤魔化し、漫画を鞄にさっとしまい、教室を出た。

桃菜はそのまま屋上へ行き、ドアを開けた。
「んー、息苦しー!なんで〈ごきげんよう〉なんだろ?朝の挨拶は普通〈おはよう〉じゃないのかな?」
フェンスに寄りかかり叫んだ。

「よし!今日の発散、終わり!!授業始まっちゃうし戻ろ!」
屋上のドアを開け、教室へ戻ろうと歩き始めた。すると…
「ごきげんよう!葉音雪様!」
「葉音雪様、今日もお元気そうですわね。」
「葉音雪様、教室までお供します!」
廊下にいた生徒達が次々と近寄ってきた。
――うお!?また……。
「おはよう。みんな、今日もありがとね。」
笑顔で流しながら教室へと急いだ。
やっとの思いで戻り席に着くと、前の席に座っていた姫美が手を口にあて笑いながら振り向いた。
「今日も人気者ですわね~、桃菜さんは。またファンが増えたとお聞きしましたわ。」
「そんなことないよー。私が、みんなと雰囲気が違っていて珍しいのと、まだこの高校に慣れていないのだろうと気を使ってくれてるだけだよ、きっと!」
満面の笑顔で答え、教科書を取り出した。
そして、授業が始まり時間は流れ、放課後……。

桃菜は騒がれ学校から出ることのできなくなる前に急いで教室を出て、家へと帰った。

本当はバイトをしたい桃菜であったが、学校の校則でバイトは禁止であった。
そうでなくとも、そもそもバイトをする者はこの学校にはいる訳もない。
そのせいもあって、バイトができなかった。