『わふっ』

「わぁっ」



突然のブルさんの声に、ふと我に返る。

足元を見れば、そこではブルさんが早く歩きたそうに舌をだしてこちらを見ていた。



「あっ!ブルさんごめんね、いこうねっ」



どうやらツリーを見たまま、長いこと固まってしまっていたらしい。

歩き出すとブルさんはぐいぐいとリードを引っ張るように進んで行った。



……もう、一年も経っちゃうんだ。

シローせんぱいに恋をして、偶然仲良くなって、お昼を一緒に過ごすようになった。

シローせんぱいはあの日のことなどまったく覚えていなくて、わたしひとりの思い出だったことに少しがっかりもしたけど……。でもあえて、言わずにいる。



いつか、シローせんぱいが不意に、思い出してくれたらいいな、なんて。

その頭の中に自分が入りこむ、そんな瞬間を期待して。