やがてかなり慌てた様子で、真っ赤な顔した“消し子ちゃん”がやってきた。

彼女は黒板消しを拾い上げると、一目散に逃げて行ってしまった。


「あははっ!」


こっそりと一部始終を見ていたオレは、たまらず大声で爆笑してしまった。


「オマエ、さっきから何やねん?」


サトシが眉を吊り上げて不機嫌そうな顔つきで尋ねる。


「ううん。何でもないねん…くくっ……」


この不可思議な光景を誰にも言いたくなかった。

あまりにも面白すぎて。


気がつくと、さっきまで落ち込んでいた気分はすっかり晴れてしまっていた。

ありがと。

消し子ちゃん………プッ。



その日以来、時々彼女は窓辺に現れるようになった。

いつも黒板消しをパンパン叩いて。


さらに言えば、たまに黒板消しを落としているのをオレは見逃していなかったぜ。