朝も夜も、塾の日に藤倉で降りるときも、駅構内に彼女がいるんじゃないか、と常に探していた。
「これ、藤宮の学園祭チケット」
「えっ!?」
 差し出された封筒をまじまじ見ていると、先輩が中身を出して見せてくれた。
「インターハイのとき、藤宮くんにお願いしてたんだ」
 なんて……?
「俺が勝ったらプレミアムチケットちょうだいって」
 先輩はいたずらっ子のように目を細めて笑う。
「そしたら本当に届いた」
「先輩、そんなこと一言も言ってなかったじゃないですかっ」
「だって、あまりにも彼の反応が薄かったからさ。本当に送ってくれるかなんてわからなかったし」
 なんでもないことのようにカラっと笑って話す先輩が、あまりにも先輩らしくてうな垂れたくなる。