"「俺は、紺。紺って言うんだ。美味しい料理を頼むよ、人間さん」"



(嗚呼。……この世界には、あんなに綺麗に微笑む人喰いがいるのか)


流れで断れなくて、思わず自分の家に招き入れてしまったけれど……普通じゃ考えられない事態だ。
人間が人を喰う人喰いを家に入れるなんて。もし私の両親がまだ生きていて、この家に住んでいたとしたら、私は完璧に気が狂った変人扱いされていたに違いない。




「とても美味しい料理をありがとう」

バッと後ろを振り返ると、思った以上に彼の整った顔が近くにあったので、心臓が脈打つ。
心拍数の上昇は過去最大である。



「こ……こん、さん?」

「何をお礼したらいいかな?あいにく、今なにも持っていないんだ」




なにしてほしい?


そう言ってあまりにも卑しく耳元で囁くものだから。

嗚呼、この人こうやってヒトを誑して餌食にしてきたんだな、と嫌でも分からされた。