「…フーッ」


壁に寄りかかり、片手をジーパンのポケットに突っ込んで煙草の息を吐き出すのは兄、友希(トモキ)。


「やっぱり煙草は上手いね」


そう呟いて彼の隣で煙草を吹かすのは弟、心太(シンタ)。


「当たり前だろ。この上手さは餓鬼にはわかんねぇよ」

「だね」


ふたりは同時に吐き出すと、遠い目をして青い空を見上げる。

友希と心太はそれなりに身長差があり、真っ黒な髪なのが友希、茶が混じっているのが心太だ。

まだ朝早いため人通りは少ないが、あちらこちらで家庭の音が聞こえる。何処の家ももう起床
して動いているのだろう。

そんな音に耳を傾けながら口に煙草を含み、朝独特の空気を肌で感じていると、ふたりに声がかかった。


「…アンタたち、何やってんの?」


その女の目は鋭く、声色も低い。


「…」

「聞いてんの?」


友希は鬱陶しいそうな表情を浮かべ、ちらりと目を向ける。心太は女と友希両方を見比べ、不安いっぱいになった。