2限目終了のチャイムが扇形のホールに鳴り響く。

マイク越しの講師の声に代わり、教科書をしまう音とガタガタという椅子の音が壁に跳ね返り、

ザワザワというおしゃべりと共に扉の外へ吐き出される。


化粧と香水の匂いが充満していたホールに、すぅっと新鮮な空気が入り込んでくる。

初老の男性講師の表情が、心なしかホッとする。


「じゃ、由希、あたしバイト行くね!バイバイッ!」


「バイバイ」と答える隙もなく、詩織がサンダルのヒールをカツカツと鳴らしながらダッシュで走り去っていった。


ちょっとぉ…

そんなに急いで帰らなくても…