登校して、教室に入ると、健介君が近付いてきました。
その顔には、足跡が二つ、くっきりと残っていました。
私はすぐに頭をさげました。
「健介君、昨日はごめんなさい!本当にごめんなさい!」
健介君は、しばらく無言で私をにらむと、低い声で言いました。
「……話がある。ついてきてくれ」
そう言って、健介君は早足で教室を出ました。私はとまどいながらも、それについていきました。


私達二人は昨日の校舎裏へ行きました。壁に、健介君がめりこんだ人型の穴がまだ残っていました。漢字の「大」みたいな形です。


健介君は、背を向けてそれを見ながら、ぎりぎりと拳を固めていました。
私は、恐る恐る聞きました。
「健介君……、話って、な、何かな?」
おそらく昨日のことを怒られるのでしょう。あんなことをしてしまったのです。仕方ありません。覚悟はできています。


健介君はきっと振り向きました。


私はきゅっと身を縮めます。


「南斗さんに、お願いがあるんだ」
「……お願い?」
叱責がくると思っていた私は、意外な申し出に目を丸くしました。
「ああ」
「あ、……そうなんだ。それで、お願いって?」


健介君は、大きく息を吸うと、背筋を伸ばして、まっすぐに私の目を見ながらこう言いました。


「おれ………付き合ってほしい!」


その時、校舎の近くにある線路を、特急列車が通り過ぎました。すごい大きな走行音があたりに響き、健介君の言葉の一部だけがよく聞こえませんでした。


でも、最初と最後の部分はしっかりと聞き取れました。


「おれ」
「付き合ってほしい」






・・・・・・ツキアッテホシイ?