……とりあえず、もうすぐ大金が手に入る。明日で立場は交代するんや、100万もいらんやろうけど…もう日記に書いてもうたし、多いに越した事はないやろ。それだけあれば麗菜は、余裕で今日一日を過ごせる。もう二度と、あいつに惨めな思いはさせへん。


誠は駅に着くと、切符を買って電車に乗った。確か、N市の『Nウインズ』と言うところで、馬券が買えると聞いた事がある。とりあえず、誠はそこに向かった。片道、550円の切符だ。往復すると、1100円になる。片道の切符を買った誠の財布には、あと450円しか残っていなかった。しかし帰りは100万を手にしているので、なんら問題は無い。

N市に着いた誠は、キョロキョロと『Nウインズ』という所を探した。

「どこや…」

しかし、なかなか見つからない。誠は、横断歩道の信号を待っている男に聞いてみることにした。

「すいません。Nウインズに行きたいんですが」

「あぁ、それやったら、あれや」

男が指差した方に、小さく建物が見える。

「わかりました、ありがとうございます」

誠は男に礼を言うと、その建物に向かって歩きだした。10分程で到着すると、早速中に入ってみた。

「……」

警備員が二人立っている。『東京第○レース、そろそろ……』と、放送が聞こえる。外からはわからなかったが、中には意外と人がいた。大半は年寄りだが、中には誠より少し上くらいの男や女もいた。独特な臭いがする。誠はこの初めての光景に、まるで隔離されたような、どこか異次元に飛ばされたかのような気分 になった。

「さて…」

キョロキョロと辺りを見渡す誠。