開店時間になるとすぐに、それを見計らったように数人の客が列を作った。 
 私は言われた通りに営業スマイルで対応する。 

「いらっしゃいませ」

「えっと、ハンバーガー10個」

 えっ、10個も? 

 私は木下に注目を伝えると、何故だか「頑張って」と言われた。 

 ハンバーガーが出来上がった。 

「お待ちどうさまでした。は10個で10000円になります」

 フリータ―か、浪人生か。良く分からないような感じの男はポケットから千円札10枚を取り出すと、ハンバーガーの袋と引き換えに私に差し出した。 


「ありがとうございました。また、どうぞ」

 私は、教わった通りの接客をしたが、客は一向に帰ろうとはせずに、そこにずっと立ったままでいる。 
「どうかされましたか?」
 私は客に聞いた。客は恥ずかしそうに言った。 

「10個買ったんだから、いつものサ―ビスを・・・・」

 こいつ何を言ってるんだろう? 

「あのう・・・・サ―ビスって?」

 客は言った。 

「いつものこれですよ」

 そう言いながら、客の手がぬ―っと伸びてきて私の左胸を鷲掴みにし、何回か揉んできた。 

「きゃ―」

 私は客の手を払いのけると、その場に背中を丸めた。 

 客はそれが終わると満足したかのように帰っていった。 


「木下さん」

 私は強く木下の名前を呼んだ。 

「頑張ったねえ。さあ、次のお客さんが待ってるよ」

 そこには、満面の笑みで私の顔を見つめる男達でいっぱいになっていた。 


 時給3000円。この意味が今やっと分かった。