それは、私が中二の夏だった。

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 私の母さんは交通事故に遭って、救急車で病院に運ばれた。

 その事実は、学校にいた私に電話で伝えられて。

 学校を早退して病院に駆けつけることになった。

 母さんは全身を包帯でぐるぐる巻きにされて、ミイラみたいだった。

「死んだら嫌だよ!」

 私の言葉にも。

「母さん、目開けろよ!」

 お兄ちゃんの言葉にも、母さんは意識を取り戻さなくて。

 絶望したとき、母さんの意識が戻ったんだ。

 そのとき、

「頼と、海を呼んで…」

 母さんは父さんを呼ばなかった。