「どけぇぇっ!!」



 怒号とともに、レンは刀を振るう。

 だが多勢に無勢、少なからず傷ついていく。

 それはエイジも同様だった。



「…ユイ…!!」



 まとわりつく敵を、気力で振りほどく。

 何とかして、一刻も早くユイの元に辿り着かなくてはならなかった。



☆ ☆ ☆



 そろそろ、夜が明ける。

 この荒んだダウンタウンも、他のどの街とも同じように朝日は昇り、それは一瞬だけでもこの空気を浄化してくれているようで、とても綺麗だった。

 あと10分も走れば、本部ビルに辿り着く。

 その道中にある廃工場の前で、ユイは朝焼けを眺めていた。

 ここに来るまでに、何の障害もなかった訳ではない。

 ユイが着ている安物のTシャツとジーンズはボロボロで、 所々血が滲んでいた。

 このTシャツはエイジから借りたもので、後で買って返さなきゃならないと、ユイは思う。

 すると、廃工場の入り口に、何人かの気配がした。

 振り返ると、朝日でシルエットになっていて、その人物を判別することは出来なかったが。



「…朝早くから、ご苦労ね」



 そのシルエットに、ユイは声をかける。



「せっかく綺麗な朝焼けなのに、あなたがいると汚れて見えるわ」

「どちらも血塗られた裏の世界に身を置いているんだ、それは同じだと思うんだがね、ユイ」



 何人かの部下を従えて立つその男、ロンは言った。



「タイムリミットは近いわ。余裕がないでんでしょ、これからどうするつもり?」



 ユイは、真っ直ぐにロンを睨み付けた。