急に心臓は物凄い速さで鼓動を始める。


ドク ドク


玄関でなにやら話し声が聞こえ、それはだんだんとリビングに近づいて来た。



あわわわッ
どど、どうしよう……


初めはなんて言えばいいんだっけ……


昨日、笑顔と一緒にいっぱい考えた言葉が出てこない。


そして―――…




ガチャ




リビングのドアが開いた。



来たあああっ!!!!




「あっあの!
おじゃましてます!! ああ……あたし、今日から少しの間ここでお世話になります!! 桜井 未央ですっ!よ、よろしくお願いします!」


あたしは振り返りざま、頭を思いきり下げてあいさつをした。



「…………」

「……?」



頭を下げたまま固まるあたし。

なんで?
なんで、なにも言ってくれないんだろう。
もしかして、もしかしなくても失敗した?


ゴクリ……

手に冷たい汗をかきながらあたしはゆっくり顔を上げた。



「……」


え???


「いやぁ…… 未央ちゃん、ごめんごめん。僕だよ」



そこには、仕事を終えたおじさんが苦笑いをして気まずそうに左手で頭をクシャクシャして立っていた。


「……ぁ…あの」



うわぁ、最悪……
あたしは顔が赤くなるのを感じた。



「お……おかえり、なさい」



あたしは、はははと苦笑いをしながら俯いた。



「誰?……誰かいんの?」



そんなセリフが耳に届くと同時に誰かが、おじさんの後ろから顔を覗かせた。