「まずは、自己紹介から」
私が真剣な顔で話始まると、芹沢もさっきの笑顔が嘘のように真剣な顔になった
「私の名前は、『徳川風珱』です。江戸城からやって参りました……と言うか、逃げて参りました」
「………………」
ポカンとする芹沢
そんな芹沢をよそに、私は話を続けた
「私は、現将軍の徳川家茂の実の妹です。……ここに証拠も」
私は芹沢に、徳川家の紋章が刻まれた薬入れを見せた
すると、芹沢は目を丸くしながらも、何とか状況を判断していた
「そうか……では、風珱は家茂公の実の妹で、江戸城に住んでいた……でも、逃げ出してきて、儂に会い、ここにきたと言うわけじゃな?」
「はい」
すると、芹沢はわかならいというように言った
「江戸城の暮らしはなに不自由なしに暮らせていたはずじゃ……それなのに、なぜ逃げ出したりしたのじゃ?………それよりなにより、どうやってここまで逃げてきたのじゃ?」
「私の命は、もう長くはありません」
私は、すべてを話した
江戸城で過ごしてきたこと
子供の頃から不治の心臓病を患っていたこと
兄上の上洛をきっかけに、脱走を決意したこと
そして、どうやって逃げてきたかまで
芹沢は、なにも言わずに聞いてくれた
「……私は、残り少ない命に賭けたのです」
「賭けたとは?」
芹沢は、わからないと言うように首を傾げた
そんな芹沢を、私は確りと見据えた
「私は、命を賭けたのです……なに不自由ない生活と引き換えに、自由に私の夢を叶えるために」
「………面白い……その賭け、儂がかった!!風珱の夢とやら、儂が叶えてやろう!!」
芹沢の目は、自信に満ち溢れていて、本当に私の夢を叶えてくれる気がした
いいえ、叶えてくれる
この人なら
私は、溢れ落ちる笑顔をそのままに、力強く頷いた