ふと顔を上げる。 通学路から離れた、小さな川の土手が目の前に広がる。 「……またここ……」 親に怒られたとき 友だちとケンカしたとき 嫌なことがあるといつもこの場所に来る。 土手の小石を拾って、思いっきり川に投げる。 それが蒼にとって最高のストレス発散になるのだ。 「よおおおしっ」 蒼は勢いよく土手の坂を駆け下りて、汗で二の腕に張り付いた袖を肩までたくし上げた。