メールが無事送信されたことを確認すると、紙コップやお菓子の散乱したテーブルの隅に携帯を置く。

大きく深呼吸をすると、空気が濃く美味しく感じられた。


はぁー、疲れた……。


それでも、友達の幸せな話っていうのは嬉しいものだ。

疲れた目をショボショボ瞬かせながらも、私の顔は思いっきりニヤけていた。


「ふふ……」

なんだか、変な感じ。
だって、あの東雲が……だよ?

いつだって自信なさげに「僕は……」って呟くだけだった東雲が、メールの中では自分のことを「俺」って呼んでいて。

あんなに雄弁に(っていうか、ダラダラと?)自分のことを語ってくれたのも初めてで。


なんだか、別人みたい。

もしかして、東雲の中の男っぽいキャラが目覚めちゃったのかな?

……って、東雲に限ってそんなの絶対ありえないか。


東雲が彼女に不意打ちのキスをされて慌てふためいている様子があまりにも簡単に想像できて、私は笑ってしまった。


ほろ苦いファーストキス?

ううん。
十分甘酸っぱいと思うけど!


「ファーストキス、かぁ……」

なんだかくすぐったい響き。


その甘酸っぱさを噛み締めながら頭を上げると、広い和室の一角で後輩と談笑している慎とバッチリ目が合った。

(わ、わわ……っ!)

慌てて下を向く私。

やばい。
思わず目を逸らしちゃった!

今の態度、慎に絶対「感じ悪い」って思われちゃったよね。


でも、今、このタイミングで慎と目が合うのはなんだかとっても恥ずかしい。


だって、慎は私が初めて好きになった人で。

しかも、ファーストキスの相手……だったりするのだから。