席が隣になってから、
斗真はよく話しかけてきた。

千秋も一緒にたわいない話もよくしていたし、
先生に隠れてみんなでトランプをしたりしていた。

千秋はよく綺麗に折った手紙を投げてくるので、先生の目を盗んでは投げ返した。

「真穂、斗真と仲いいね。どうなの?おがのことはもーいーの?」

くだらない内容に、そんな内容を混ぜてくるものだから、
うっかり開いて、隣の斗真に見られたらと、
真穂は慌てて封を閉じる。

千秋にはバスケ部の先輩の彼氏がいた。
千秋は男好きだが、たとえ別れてもわたしの好きな人を好きになったりはしない、その安心感はあった。
千秋は、そういうやつだ。

斗真は相変わらずくだらないことをよく話し、それからよく、わたしにノートを貸して欲しいと言った。

わたしはいつも、もーしょうがないなーと言いつつ内心少し嬉しくて、
よくノートや教科書を見せてあげていた。

そんなある日。
違うクラスの可愛い女の子が、斗真のところへやってきた。

学年でも一番くらいの、ダンス部の可愛い女の子。
彼女は、斗真に何かを渡して話しているのが聞こえた。

「とーま!これ借りてたCD~返すの忘れてたー」
斗真は、
「マジ?ありがとー俺も忘れてたわー」
とすんなり受け取っていて、その後楽しそうに話していた。

真穂は、なんとなく2人の親密な空気を感じて、ドキっとした。

千秋が寄ってきて、
「斗真、桜ちゃんと仲いんだね」
と話すので、真穂は
「うん、、、」としか答えられなかった。

近くで聞いていた、千秋と同じバスケ部のマネージャーの早織が、
「ああ、あの2人1年の時付き合ってたからねー」とさらりと言い放って、またどこかへ行ってしまった。

千秋は、「まじで!?さすが斗真マジック!真穂やばいんじゃーん」などと大声で叫ぶので、真穂は「ちょっとなにそれ!」などと自分でもわけのわからないことを口走りながら、
心中穏やかでなかった。

斗真は、誰に対しても優しいのだ。
そこが好きで、けれど、だから好きになりたくない、とも思っていた。
最初苦手意識を持っていたのはそうしたところかもしれない。

家に帰ってからも、真穂は混乱していた。