ケータイ小説 野いちご

「秘密」優しい帰り道【完】

●私の秘密
 勇気






その日の夜、いつものように自転車に乗り、駅前の塾へと走った。


塾は週2回だけど、その日以外も毎日塾の自習室に行って勉強している。




今日は塾の日。


塾の入口前に自転車を停めていたら、茜が自転車で走ってきた。


「くるみ、私見ちゃったんだけど」


茜が自転車を停めるなり、興奮しながら話しかけていた。


「何.....を?」



茜は私の腕を掴んで耳元に顔を近づけた。



「今日、O高校の人と一緒に帰ってたでしょ」


「あっ!」



自動ドアが開き、先生たちに挨拶すると茜と一緒に階段を上った。


「すごく背が高くて、足が長くて、顔見たかったな......

ねえ、くるみとどういう関係?いつの間に?」



教室に入っても、茜は興奮状態だった。




「あぁ、あのね.....」


私は茜に凪くんとのことを全部隠さずに話した。



「すごーい!」



茜が両手を合わせてそう言った瞬間、先生が入ってきて授業が始まった。



「帰り、また聞かせて」


茜がひそひそ声で言ってきて、私は小さく頷いた。


こういう話を茜にするの初めてだ。



今まで私、男子をそんな風に見たことがなかった。


部活ばっかやってて、女子と一緒にいるのが当たり前で、


こんな、男の人にドキドキしたり、胸がきゅんとしたりすることなんて、


今まで一度もなかった。



こんな気持ち.......初めてだ.......


【くるみ】



凪くんの声は、低くて優しい響きだと思った。


その声で、優しく名前を呼ばれるだけで胸がきゅんとする。


優しい言葉を囁かれると、頬が熱くなる。


今だって、こうして思い出すだけで、こんなにもドキドキする。



大人っぽい顔が、笑うと急に幼くなって、

かわいくて。


その笑顔がたまらなく好きだと思った。



細い体も、ゆっくり歩く長い足も、


ぎゅっと繋いでくれた大きな手も、


全部好き。




「井川ー、聞いてるかぁー」



「あっ、はい」



「しっかり聞けよー」



やばい、ちゃんと勉強しなくちゃ。

絶対に凪くんのいるO高校に合格しなくちゃ。


私は頬をぺちぺちと叩いて気合を入れた。








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