彼の家に着いた。
アパートの2階、202号室。
お互い名前も知らない。
会話は自己紹介から始まった。

「俺の名前は佐崎和馬(ささきかずま)。24歳になったばっかの社会人。君は?」

私はためらった。
本名を言うべきなのか…
ちょっと間をあけて答えた。

「私は…吉井美香(よしいみか)。じゅう…15歳…」

和馬は目を丸くした。

「君は中学生…?」

美香は頷いた。

「うそだぁ…俺、今年から名桜中学の先生になるんだけど。。まさか名中じゃないよね?」

今度は美香が目を丸くした。
その顔をみて和馬は更に驚いた。

そう。二人は同じ学校の教師と生徒だったのだ。

今は春休み中のために気付かなかった。

「まぁ、、いいや。今は春休みだし。風邪引くといけないからシャワーだけでも浴びておいで。傘かしてあげるから。」

和馬の口調が先生口調になった。
美香はゆっくりと立ち上がりシャワーを浴びにいった。


美香はシャワーを浴びてでると自分の着替えがなくなっていたことに気づいた。
タオルを巻いてでてみると美香の洋服は干してあった。

「あ、ごめん。濡れたまま着たらシャワー浴びた意味ないと思ってさ。俺の服貸したげる。」

和馬は美香に自分の服を渡した。
それを受け取った美香は下にしゃがみこみ泣き出した。
和馬は驚いた。
なぜ美香が泣いたのかがわからなかったから。
必死で泣き止まそうとするが声をかけるたびに美香は泣いていく。
どうしていいかわからなくなった和馬は美香の両脇に手をいれ抱き寄せた。
そして美香に優しく話しかけた。

「美香、何があったかわからないけど俺に言えることなら話してごらん。なんでも聞いてあげるから。」

美香が泣き止むまで和馬はずっと美香を抱きしめていた。

カーテンに写る雨の影が和馬には美香の涙にみえた。