芹沢鴨が死んだ―――知らせは町中に広まっていた。
町でうごく哀音の耳にも届いていたが夜、島原大門近くに呼ばれ、前川から話を聞くことになった。
島原で飲むと永倉新八に誘われたことを使い、哀音に会う機会を作ったらしい。
「気分が悪くなったから先に帰ると告げてきた。さすがにここで話は出来ん、どこか話せる場所に」
「でしたら、大和屋跡へ行きましょう。誰も使っていません 」
そうして大和屋で芹沢鴨の粛清の話を聞いた。
会津藩から、芹沢鴨を粛清するように指示が出、幹部たちは芹沢鴨の行為のこともあり動いた。
芹沢もそれに気づいていたようで、刃を交える時を待っていた気もしたらしい。最後は副長――土方歳三が彼を殺した。
幹部と芹沢が飲みに行くという話をきいて、前川は事が起きると判断し、戻ってきてから様子を窺っていたために分かったことだと、悲しげに話した。
「そうですか」
「知って、いたのか」
驚く様子もない哀音に、静かに顔を俯かせる。
1つ、ため息をついて前川の顎を上げた。
「?!」
手を離してまっすぐ見つめる。
「あの人は、それを望んでいた。死ぬべき人ではなかったとは思いますが、幹部も信念で芹沢鴨を斬ったでしょう。ならば、それが一番あの人のためだったはず」
「そんなことは分かっている…っ、それでも死なせたくなかったのだ…!芹沢局長を何も知らなくて……やっと少しわかってきたところだったのに」
握り拳をつくり、眉根を苦しそうによせる。