―――ベベンッ!





賑わう町に、乾いた音が行き交う人々の間をくぐって行く。





大きくて品なぞ知らないというふうに、自己主張がひどい音だが人々に寄り添って、哀音の周りに人を集めた。








「私の名は愛音。50文でどこででも演奏致します」











冬にしては暖かな陽が差し、三味線が明るく見え美しい。







切れ長の目に、紅を塗った唇。淡々と決まり文句を並べ、にこりとも笑わない哀音に集まった人は良い顔をしないが三味線の音が耳に残っているせいか、その場を動かない。









礼儀正し頭を下げながら、人々の顔を覗いていく。風貌から武士らしい人は見ず、ただ演奏を興味深そうに聴いていた人のみが残る。











幾曲か演奏しても人が途絶えることはなく、終われば拍手が送られてきた。