ケータイ小説 野いちご

女神の災難な休日

まり的危機の乗り切り方



 個人的に救いだったのは、彼が忙しいことだ。

 私はそんなことを考えながら飛んでいく窓の外の風景をぼーっと眺めていた。

 あ、彼っていうのは勿論うちの夫ですよ、だって、あの怒ると迫力が半端ない夫は今、がっつり繁忙期なために携帯みる暇もないはずなのだ。昼食だってとる時間なんてなく、売り場に監禁状態なはず。

 ということは、妻子がバカ野郎に車ごと乗っ取られて拉致&連れまわしされていることに気付く可能性が低いってわけで。

 警察がコンビニのカメラを解析してうちのバックナンバーを読み取り、我が家の確認をして夫の勤め先を突き止め連絡を入れるまでに、どのくらいの時間がかかるだろうか。

 ・・・ああ、良かった。だってそんなこと知れたら最後、私ははるか彼方までぶっ飛んでしまうほどに心配をされて、しかもその八つ当たりを受け、自分なんて必要ないんだって勝手に凹む彼の機嫌を直すためにアレコレやらなきゃならなくなるだろう。そんなの嫌だ。ただでさえ忙しい年末に、どうして自分の男の機嫌取りまで!!

 だから、どうか物事が大事になる前にこのバカ男から解放されますように。そう胸の中でお願いして、ちらりと運転席の男を見る。

「ええーと、すみません、ちょっと伺いますけど」

 私は声を掛けた。一応武器も持っていると判った今、あまり失礼な口をきくのはどうかと思ったのだ。まあ、それに関してはすでに遅いかもしれないけど。ヤツはバックミラーを通して疲れた目で私を見る。

「何?」

「なぜコンビニ強盗なんかを?あそこのコンビニはレジの中もきっと潤ってないと思うんだけど」



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