ケータイ小説 野いちご

女神の災難な休日

バカ野郎の巻き添えを食う




「じゃあね、行ってらっしゃーい」

「さーい」

 時間も遅い朝、玄関で遅番出勤の彼を雅坊と見送った。気温がぐーんと下がった朝で、玄関先でも吐く息が白く空に上っていく。彼は寒さに少しだけ肩を竦めて、目を細めて振り返った。

「雅坊、今日一日母ちゃんを頼むぞー。この人は目を離すと何するか判らないんだからな」

 そりゃあ一体どういうこったい。私は唇を尖らせて威嚇する。まるで私が赤ん坊よりお荷物のような言われ方ではないか!そう思っていたら、隣に立つ息子がニコニコ笑って返事をした。

「あーい!」

「これこれ、あんたまで、ちょっと?」

 息子を上から見下ろしていると、ゲラゲラ笑いながら夫が遠ざかっていく。私達夫婦が勤める百貨店はここから徒歩で10分ほどの場所にあるのだ。

「寒い寒い!早く入ろう~」

 朝刊を束で取ってから、雅洋を急がせて家に入る。今日は彼の朝が遅めで良かったので、皆で10時ごろまでぬくぬくと2度寝までしてゆっくりと朝食を食べたのだった。家事で体を動かさないとお昼ご飯が入りそうにない。

 雅が一人で音楽絵本で遊ぶ傍ら、私はバタバタと洗濯と掃除を済ませた。年末の大掃除などは出来そうにないけれど、それでも一応のことはしておかねば、と思って、洗面台やお風呂は出来るだけピカピカにした。

 私も明日は出勤だし、一度デパ地下に入ればお昼も食べれないほどの激務になることは間違いない。今日の貴重の休みの間にやっておかねばならないことは結構あった。



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