───サァー………

───サササァー………


ひとりで海辺に立ちすくむなつの耳に、あの日と同じ波の音が聞こえる。


なつはゆっくり瞳を閉じると、まぶたの裏に君を思い浮かべた。


『なっちゃん』


愛しい君の声が、愛しい君の笑顔が。


なつの頭の中をぐるぐると駆け巡る。



君と出会った、4歳の夏。

君が好きだと気づいた、10歳の秋。

君と初めてケンカをした、11歳の春。

君とふたりでキスをした、12歳の冬。


そして…………なつの前から君がいなくなった、13歳の夏。