その頃、明景家には明景 安太郎の妻・ヤヨ(やよ、当時34歳)、長男・力蔵(りきぞう、当時10歳)、次男・勇次郎(ゆうじろう、当時8歳)、長女・ヒサノ(ひさの、当時6歳)、三男・金蔵(きんぞう、当時3歳)、四男・梅吉(うめきち、当時1歳)の6人と、斉藤家から避難してきたタケ、巌、春義の3人、そしてオドの合計10人(タケの胎児を含めると11人)がいた。

前日の太田家の騒動を受け、避難した女や子供らは火を焚きつつ怯えながら過ごしていた。

護衛は近隣に食事に出かけ、更に太田家へのヒグマ再出没の報を受けて出動していた為、男手として残っていたのはオドだけであった。

太田家から逃れたヒグマは、まさにこの守りのいない状態の明景家に向かっていた。