私、森山智香(モリヤマチカ)には好きな人がいます。
その人は同じクラスで、学校1のモテ王子です。

「言える筈ないな」

誰も居る筈のない屋上に、朝一番に来ていた私は1人呟いた。

「君が好きです…なんて言えるわけないよ」
「誰に言えないの?」
「えっ」

上を見上げると、よく見覚えのある顔があった。
そう、私の好きな 風木千早(カザキチハヤ)君の顔が。

「んで、誰に言えないの?”好き“って。」
「あ…えっと…」

流石に「あなたです」なんて言えないし…。

「まあ、別に君が誰に何言えなくても俺はどうでも良いけどね」
「そりゃそうですよ。私達に関わりなんてこれっぽっちもないですから。」

なんで可愛くないことしか言えないんだろう。
なんて思ってると、風木君はバツが悪そうな顔をして

「あのさ、森山さん。同じクラスだから敬語やめようよ。」

なんて言ってきた。

「いえ、それはさすがに。馴れ馴れしすぎるかと。」
「そんなことない。じゃあ俺は“智香”って呼ぶから、智香も“千早”って呼んで?」

すごく爽やかな笑顔で言われたから、ものすごく断りにくい…。

「じゃあ、千早君」
「“君”つけないの。」
「え、いや」
「早く」
「ち、千早」
「うん、それで良し。」

そう言うと千早はフワリと微笑んだ。
やっぱりかっこいいな。
そんなことを思っているとチャイムが鳴った。

「あ…。」
「お、鳴っちゃった。教室行こっか、智香」
「うん」

頷きながら私は千に笑顔で答えた。