それからしばらくして、悪阻が始まった。


1日中、気分が悪く、ムカムカしていた。食べたくないし、食べたら吐くけれど、なぜかグレープフルーツだけは受け付けた。



「オレの分のメシ、作らなくていいから」


見かねて久馬くんがそう言ってくれた。


「せっかく作ったのに」

あ…。
コレって、マタニティブルーってヤツかな?


久馬くんは、気を遣って言ってくれているのに、無性に腹が立った。


そして、何が哀しいのか涙があふれた。


「今日は作ってくれたから食べるけど。明日からは大丈夫だから」


こんな口調なのはいつものことで、腹が立ったことは一度もないのに。涙がポロポロ止まらない。

「…実家、帰るか?」


これも久馬くんなりに気を遣って言ってるのは、わかってる。


「私のこと、邪魔?」