『菜々子、俺はいつまでも傍にいるよ。幼馴染みとして、友人として、男として...。辛い時はちゃんと甘えろ。いつもみたいに、ちゃんと慰めてやるから』




『...おかえり、菜々子』


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菜々子に伝えた言葉全てに、何一つとして偽りなんてなかった。
どれも全て本当の俺の気持ちで...。

ただずっと君の傍にいたいだけ。


今までただの幼馴染みだった友人が、好きな女に変わると、自分でも驚くほど気持ちは急激に加速していった。

ちょっとした仕草、表情。今まで何年も見てきたのに可愛くて、気になって仕方ない。

あんなに菜々子の恋愛を応援していたのに、複雑な気持ちになる。


...だけど一方通行な気持ちが、通じることはなかった。


幼馴染みとして、友人として、男として...。
傍にいたかった。...だけど菜々子は数ヵ月後、今までの生活を全て捨てて、地元へと戻って行った。


菜々子はあの日以来、一度も俺に弱音を吐いたり、見せたりすることなく、笑顔で俺の前から姿を消した。

...菜々子が地元に帰って数ヵ月も経つのに、あの日の最後の笑顔、言葉が忘れられない。


『...翔ちゃん、本当にありがとう。今の私がいるのは、翔ちゃんのおかげだよ?...だからお願い。絶対幸せになって。...絶対だよ』


そう言って新幹線に乗り込み、行ってしまった。

『絶対』なんて言葉、俺は好きじゃない。

世の中に『絶対』なんてことは、ないんだから...。
なのに、菜々子はなんで最後にそんな言葉を使ったんだ?
絶対に...なんてことは、ないんだよ...。