(南斗晶)

ゴングが鳴りました。


角田由美は、急に笑みを浮かべながら、軽い足取りで歩み寄ってきました。
私は、とまどい、構えをとるのを忘れました。
「よろしくお願いします!」
はきはきとした声で言うと、角田は手をさしだしてきました。握手を求めているようです。


「あ、うん」
わたしは応じました。握手をすると、角田はわあ、感動の声をあげました。
「すごいっ、たくましい手をしてるんですね」
「まあね。鍛えてるから」


「へえ、こんなゴリラみたいな手で、私から健介お兄ちゃんを奪ったんですね?このメスブタがぁぁぁぁっ!!」


突然下腹部に、重い痛みが走りました。


角田が、笑みを浮かべたまま、私の股間を蹴りあげたのです。


「ぐっ」
私はとっさに下がろうとしました。しかし、角田は握手した手を離しませんでした。そしてすごい力で引っ張ってきたのです。


十四歳の少女の力とは思えませんでした。


引っ張られ、つんのめった私の顔に向かって、角田は正拳突きを放ちました。


ごりっ


鼻の骨が曲がりました。鼻血が流れだし、口のまわりに、熱くてぬるりとした感触が広がります。


「その綺麗な顔、グチャグチャにしてやんよ!」


ばちんっ
ばちんっ
ばちんっ


そのまま角田は、私の顔面に向かって、三発蹴りを喰らわせました。血液が三回、マットに飛び散ります。