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4分音符、8分音符、3連符、16分音符……。

基礎練習は退屈で、根気が必要なもの。



だけど和希くんは絶対に手を抜いたりしない。

そして私も手を抜いたりしない。


それは、いつか音楽だけでも対等な立場で話せるようになりたいからだ。



彼のクラリネットの音は遠くからでもすぐに聞き分けられる。


春の川のように穏やかで、夏の日差しのように力強く、秋の夕暮れのように切なく、冬の朝のように凛としている。


そんな彼の音が大好きだった。