これは俺の昔の話。

今年も春がきた。
――まさか、あんなことが起きるとは思わなかった。
「あー。凛と違うクラス…」
春の定番イベントの一つ、クラス替え。
クラス替えとは人生、は大げさだから一年と言っておこう。
クラス替えとは一人一人の一年を決めるものだ。
クラスのメンバーが良ければ最高な一年になるが、クラスのメンバーが悪ければ最悪な一年になる。
去年から仲良くなった凛と同じクラスだと思ってたのにやっぱり現実は…
「厳しい…よな」
ま、まぁ、クラスは違うけど私達の友情はそんなんじゃ壊れないから大丈夫だよな。
そんな甘いことを考えてた自分がバカだった。
とりあえずクラスに行き、いろいろやって凛のクラスに行った。
「凛―って…」
凛は皆に囲まれていて、なんというか…
「す…ごい…」
人が寄り付かない私にとってすごいしか言えない。凛ってこんなにすごかったっけ。
…帰ろう。今行ったら迷惑だし。
そのまた次の日も、そのまた次の日も。凛のクラスに行っても話しかけられなかった。
だったら凛が来るのかな。そんなことを考えてた。
一週間経った。
凛は結局来なかった。行ったけど無理だった。
…なんだよ、それ。

今日は図書室行く予定だったから図書室にいる。
「あ、凛」
気づいているはずだろう。返事してくれるだろう。
「…」
今、何が起きたのだろう。
凛が無言で通り過ぎていった。
なんで?去年だったら…返事してくれるのに。
「なんでだろ…」
聞こえなかったのかな?いや、結構近い距離だったのに…
なんか心がモヤモヤする。

帰り道、なんか寂しいな。いつも一人なのに。
「琴音!」
「凛…」
いつもの笑顔だ。そう、いつもの…
「あのさ!今度カラオケ行くんだけど琴音も来る?」
「え?」
「いやー。人数足りなくて!しかたないから琴音誘うことになったんだけどさー」
シカタナイカラ?
「一応誘ったんだけど…ね!友達だからいいでしょ?」
イチオウ?トモダチダカラ?
何それ、利用と似てるじゃん。
「いや、やめとく」
「えー。それだったら皆の信頼が…」
「ふざけないで。私はいかないから」
…信じた私がバカだった。
凛は最初っから私のこと友達と思ってなかったんだ。
イチオウトモダチ
なんだ。
「あはは…何よ、琴音ノリ悪~」
そう言って凛は帰っていった。
…裏切られたんだ。
知ってたよ。人間はそういう生き物だってこと。でも、まさか凛まで…
「…もう嫌だ…」
私はそのまま家に帰った。