「はい、お疲れ様ね。今ね、看護婦サンが色々話しに来るから少し待っててね」


「はい」




そう言いながら車いすから降りて、ベッドにそっと近づいた。



“あっ……”



さっき奥サンの車いすを押していた旦那サンがこっちを向いている。



“同じ病室か………”



そう思いながらも、笑顔で会釈する自分はやっぱり悪魔なのだろうか。




嘘で固まった仮面を被ってる笑顔のあたし……



きっと上手く笑えているのだろう。



繰り返す日々の中で、きっとこの笑顔が仮面だとも知らないのだろう。



そう思いながらベッドに腰を下ろした。




布団をかけて、隣の夫婦の楽しそうな幸せに満ち溢れてる会話を聞きながら、あたしは涙しながら眠りについた。



「ゲホッッ!! ゲホッ!!」



“喉、渇いたな……”



咳込んで起きたあたしは陣痛が始まってから何も口にしてない事に気付き、急に凄く喉が渇いていた



“これ、ナースコール押せばいいのかな”



手をナースコールに伸ばしボタンを押そうとしたその時――



「ねぇ?喉渇いちゃったな……」



「おう!そうだな、何か冷たいもん買って来てやるよ!!何がいい?」



「ミルクティーがいいっ♪」


「待ってろな……!」



そう隣のベッドのカーテンが開き旦那サンが部屋から出て行った




あたしは、ナースコールから咄嗟に手を離し唾を飲みこんだ。