「そうか……母さんは今日も仕事か」

足早に靴を脱ぎ捨てて俺は家へとあがる。

俺には父親と兄弟がいない。
父親はまだ俺が幼い頃、事故で死んでしまったらしい。
だから母親と俺の二人だけだ。

家の中は妙に静かだった。
この空気を断ち切るように家の電話が鳴った。

「電話かよ……急いでるってのになんなんだよ……」