帰り際、平助に呼び止められた。

「お前、刀持ってんのか!刀使えんの?」

腰に下げていた、小太刀の事だろう。
使える訳ないじゃん、とオレが振り向いて言うと、

「ならオレが教えてやるよ!明日オレ非番だし、洗濯屋も明日は休業だろ?」

yesかnoかも聞かずに、壬生寺に来るよう言いつけられてしまった。
せっかくのオレの休みが・・・。

翌日、言われた通りしぶしぶ壬生寺に行くと、すでに平助はいた。
やる気まんまんのキラキラした顔で。

「おせーぞ!!よっし、じゃあまず刀の柄の握り方からな!!」

基礎知識についてあらかた教えてもらったあと、素振りをさせられた。
最初のうちは楽しかったが、だんだんへろへろになってくる。
手首も腕も限界だった。

「よーし!今日はここまで!」

平助が言った言葉に、ガクリとくる。
今日はって・・・またあるのかよ・・・。

「今度は再来週、またオレ非番だから、そんときな。」

なんでオレの仕事が休みの日を把握しているのかは、かなり気になったが気力がなかったから聞かなかった。
店に帰る足取りも、かなりふらついた。