「ごめんね。待たせちゃって」

「構わない。思い出してくれただけでも上等だろう」

「えっと……本当にすみません。時期的にとか色々あったけど、それ以上に定まらなかった。精神的なものが」

「君は対話すら拒んだ。一度は、まともに話すらできない状態だった」

「普通だったんだろう、と思うよ。願いが叶っただけだ。普通になりたいっていう」

「けど、君はこうして私と話をしている」

「えへへ、戻ってきちゃった。馴染めなくてね。普通に。普通でいられる自分に」

「こうしてまた君と話ができるのは嬉しいよ」

「私も嬉しいよ。そう、こうやって物語は紡がれるものだった。思い出して良かった」

「それは何より。……さて、申し遅れました。私は花王、佐倉 花王というものです」

「花王が最後のお客様になります。というか、今更終わります。完全なる自己満足で」

「終わるということは、もう書かないのかな」

「いや、そんなことはないと思う。たぶん。けど、天神は難しいだろう。彼らには悪いけれど私は昔の私とは違う。この文章でさえきっと昔とは違う」

「ふむ。では君とはお別れなのだな」

「そうなるね。貴方とは会えるはずだったんだけど。終わりの物語で会えるはずだったんだけど。」

「まあいいさ。気長に待つとしよう」

「お願いします。

さて、長らくお待たせしてしまったこの物語。誠に勝手で自己満足ながら、これにて幕引きとさせていただきます」