「寝ないの?」
暗闇のなか窓を開けて月を眺めていた少女は声が聞こえた方へと振り向いた。
「お互い様じゃない?」
「ああ、確かにそうね」
声の主は少女の近くへと移動し、月を眺めた。
「綺麗ね」
「このあたりは空気が綺麗だから、月も星も綺麗に見える」
「月、か」
「何よ」
「別に?」
含みのある言い方に少女は少しむっとしながら相手の額を弾いた。
つまり、デコピンである。
「いたっ!……もう、久し振りに家に帰ってきた妹をからかっただけじゃない」
「双子なんだから年齢差ないじゃない」
そう、二人は双子。
天神学園の三年生。
明日は卒業式だった。