「…つー訳で、服を買ってこい」

『……どういう訳?』



優雅にトーストをかじりながら紅茶に手を伸ばすオレに意味不明な事を告げるは執事


うん、トースト不味いっ!



「だーかーら、葉月様が二人にならないようにお前は女になれだって」

『服なんかあるだろ』

「ない!!この屋敷に女物はないぞ」




知るかよ、あのババァの借りろよ

とは死んでも口にしない




時々、オレに傷を負わせるババァ、

父の愛人



葉月の母は他界した

ババァは籍が入ってないがこの屋敷を彷徨くただの愛人だ
母じゃねーから


そこ、重要




んでさー、ババァは何かにつけてオレを殴りつけんだよね

前の女の子供ってとこがムカつくんだろーけどさ


ただただストレスをぶつけるようようになにかと文句をつけ殴るババァがクソうざい

しかし、まぁバレないように顔は滅多に殴らないけど



…ババァは、葉月とオレがいることを知らないし

オレを葉月として見てる





「おいっ!どうした?」

『え?あ、いや。何でもない』



文句は言わないが、殴られるのは好きじゃないから成るべく関わらないように

ソレこそ、ババァに葉月の存在がバレたらオレに黒崎財閥の子供という価値がなくなったら殺されかねない



怖い怖い


つーか、大人しく殴られてるのは父の愛人という肩書きにオレが脅えてるだけなんだけど……



ハハハと、乾いた笑い声を出すとまたも執事が五月蝿く騒ぐ


「ちょっ!大丈夫か?朔月!疲れてんのか??」

『五月蝿いな、執事。服だな?了解。おら、これ提げろ』



グイッと紅茶を飲み干し席を立つ

クローゼットから私服(Yシャツにズボン)を取り出す


「だって急に笑い出すからさ〜…、って、執事って呼ぶな!俺には遠野(トオノ)って言うちゃんとした名前があ……」
『分かったから、提げろ。オレは着替えんだよ』



言葉を止められムッとした執事

でも一礼後、お膳を提げる奴は優秀な執事だ