「月、出てないや」

血が騒ぐ夜に散歩に出るも、あいにく今日は月が出ていない。
かわりに綺麗な星たちが夜空を埋め尽くしていた。

冬の夜だというのに、薄手のパーカーを着た彼女は、行く宛もなく、ふらふらと散歩する。



「あの、すみませんっ」

そんな彼女に一人の少年が声をかける。

「?」

彼女は振り向き、少年を見つめる。

「あ、すみませんっ!人違いみたいです」

少年は青龍のしたっぱである田中だった。

「このあたりって聞いたんだけどなぁ~」

彼女の隣で田中はぽりぽりと頭をかき、辺りを見回す。