あぁ、全く面倒臭いったらありゃしない。
行事がある度に、実家に戻らなきゃならないなんて……
距離的にはさほど離れてはいないけど、僕の実家はかなりの田舎なんだ。
僕の家は古くからの農家で、このあたりではちょっとした大地主でもあるんだけど、でもとにかく田舎なんだ。
僕はそんな田舎が嫌いで、大きくなったら絶対に都会に出るって決めていた。
とはいえ、僕はこの家の長男だ。
本当ならそんなことが許されるはずがない。
だけど、僕にはライアンっていう1つ違いの弟がいて、彼がこの家を継いでも良いって言ってくれたんだ。
それでも両親や祖父母は反対した。
でも、僕だって諦めきれない!
長い話し合いの末、ある条件と引き換えに、僕は都会で暮らすことを許してもらえた。
それは、なにか大切な行事の時には必ず実家に戻って家族と一緒に過ごすこと。
大切な行事っていうのは、クリスマスや新年、家族の誕生日やハロウィンのことだ。
今日も僕は実家に向かって帰っている。
そう、明日はハロウィンだから。
遠いから、前日から出発しないと移動だけで一日が潰れてしまう。
幸い、今日は休みだから助かったけど。



朝早くに経って、懐かしい風景が見え始めたのはもう夕方近くになった頃。
本当に遠いよ。
子供の頃によく遊んだ公園では、まだ子供達の賑やかな声が聞こえる。
子供達よ、もう少ししたら、お母さんが迎えに来るぞ。
僕の家はここからけっこう遠いから、迎えに来るのはいつもお手伝いのメアリーだった。
そして、ライアンと僕とメアリーで、自転車を漕いで家に戻るんだ。



……って、確か、夏におじいちゃんの誕生日で戻って来た時も、同じことを思い出してしまったっけ。