第96話 『メッセージ』 語り手 小野田紫乃

 怪談も残りは僅かだ。紫乃さんのラストストーリーに期待をしつつ、この後の私たちの行く末を考えると不安でたまらなくなる。
「じゃあ、私の最後の話をするね」
 紫乃さんには今までどれだけの感動話をしてもらっただろうか? 怖い怪談の中で彼女の話にどれだけ救われたことだろう。そんな彼女の話がこれで終わりなのは正直寂しい。最後にいったいどんな話が聞けるのだろう。
 紫乃さんは右腕の袖をめくると、肘の上あたりを見せた。
「……ここ、なんか大きなシミみたいなものがありますね。いったい何の痕なんですか?」
 それは何かの汚れのようにも、タトゥーのうようにも見えた。
「これはね、私の死人番号なんだよ」
「え?」
 一瞬何を言っているのかわからなかったが、紫乃さんは私によく見えるように近づけてくれた。
 そこにあったシミみたいに見えたのは、殆ど擦れて消えかかってはいたが、数字がいくつか並んだものだった。
「人間はね、死ぬとあの世での通し番号として、死人番号をつけられるんだ。それでその番号ごとに管理されて三途の河を渡るの。そして黄泉の国の番人に連れられてたどり着くのが閻魔大王の館なんだ」
 ……紫乃さんの話に私は固まってしまった。いや、私だけじゃない。徹さんを除く全員が間抜けに口を半開きにしている。